11月19日に東京地検特捜部は、金融商品取引法違反の疑いで日産自動車の前会長であるカルロスゴーン容疑者を逮捕・拘留しました。

わかりやすい容疑としては、自身の役員報酬を有価証券報告書に約50億円分少なく記載したとのことです。

その他には、会社の資金を海外の個人的な資産購入に流用していたことが徐々に明らかになっております。

ここでは、犯罪そのものということよりも、コーポレートガバナンスについて論じたいと思います。

コーポレートガバナンスとは、ひと言で言うと、ステークホルダー(利害関係者)によって、企業を統制し、監視する仕組みのことです。
日本語では企業統治と言います。

今回の事件では、結果的には、このコーポレートガバナンスが健全に機能していなかったと言えます。

企業の主なステークホルダーは、株主、経営者、従業員、顧客、取引先、地域住民となります。

米国の経営者に対する株主強化の影響からか、日本でも、従業員重視から、株主至上主義の流れになっております。

ゴーン氏はその流れの象徴のように、大幅なリストラを断行し、コストカッターとしての手腕を買われておりました。
会社がそのことによって再建されたのは、評価されていますが、従業員やその家族にとっては、どのような存在であったかは、容易に想像がつきます。

米国では、コーポレートガバナンスが株主重視であり、経営の中核の取締役会には、社外取締役の比率が6割以上となっており、取締役会の暴走を構造的に抑制しております。

しかし、本来であれば、株主だけでなく、従業員、取引先、金融機関といった会社の利害関係者すべてで、健全に企業の透明性、法令順守を維持していかなくてはならないものです。

今回の件は、クーデターという見方もありますが、株主至上主義、長期的ではなく、短期的な利益偏重といった、米国タイプのコーポレートガバナンスへの警鐘と抵抗という見方もあるのではないかと考えます。

梶岡博樹